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増加する葬儀後の手続きができないケース(その1)の続き
「問題が起こる理由」
前回、地域包括支援センターなどから「葬儀後の手続きができない方がいるので何とかしてほしい」というご相談が増えているというお話しをしましたが、今回はその続きです。
まず、前回のおさらいをしましょう。
葬儀後の手続きでは、まず市区町村や年金事務所での諸手続きや公共料金等の解約・契約者変更などの死後事務手続きを行い、続いて預貯金の解約や不動産の名義変更等の相続手続きを行うという流れになりますが、これらの手続き(以下、死後事務手続き等という。)は相続人(例:配偶者や子など)が行うのが通常であり、これまでは問題があまり表面化していませんでした。
しかし近年では、子がいなかったり、子が何らかの障がいを抱えているなどの理由により、配偶者である高齢者お一人で不慣れな死後事務手続き等を行わなければならないケースが増加しています。また、親一人子一人の世帯で子が障がいを抱えているケースでは、親亡き後に障がいを抱えた子がお一人で死後事務手続き等を行うことになります。
以上がこの問題のあらましです。前回は市区町村や年金事務所等での死後事務手続きについてお伝えしましたので、今回はその後の「相続手続き」についてお話しします。
「相続手続きを行う上での問題点」
こちらも前回お話ししていますが、葬儀後の手続きのうち死後事務手続きについては、できる限りスムーズに進められるよう支援をしている自治体が増えていますし、年金事務所の窓口対応も親切丁寧なので、手続き自体が難しくてできないということはありません。しかし、相続手続きとなると大きく事情が変わってきます。
それというのも、不動産の名義変更、預貯金の解約払戻しや株式等の移管などの相続手続きは、すべて遺産(お金)がからむ手続きであるためです。具体的には、提出する書類に記入漏れや記入ミスが一切なく、必要な押印や書き損じた箇所への訂正印が鮮明になされていること、添付書類が完璧に揃っていることなどが要求され、役所での死後事務手続きよりも手続きが厳格になります。
そのため、役所での死後事務手続きができる相続人であっても、相続手続きは大変面倒なものになります。そうすると、死後事務手続きさえもできない相続人が相続手続きをすることは極めて困難であり、その結果、当然に相続手続きは放置されることになります。そして、ここで問題となるのが相続登記の義務化です。
これまでは「相続手続きができないから放置する」ことが問題とはならなかったのですが、相続登記が義務化されたことで、「相続によって不動産を取得した相続人は、所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならない」ことになりました。つまり、遺産に不動産が含まれている場合は、「外出が困難」「難しくてよくわからない」「気力が湧かない」「考えたくもない」などの理由で相続手続きをいつまでも先延ばしにしたり、放置することができなくなったわけです。
「備えあれば患いなし!公正証書遺言」
このような問題に備える方法のひとつとして、「公正証書遺言」があります。公正証書遺言で財産の帰属先を決めておくとともに、遺言執行者を指定してその権限を明確に記載しておけば、子がいなかったり、子が何らかの障がいを抱えているなどの理由により、配偶者である高齢者お一人で相続手続きを行わなければならないケースや、親亡き後に障がいを抱えた子がお一人で相続手続きを行うことになるケースでも、遺言執行者が単独で相続手続きを行うことができるので安心です。遺言執行者には、中立的な第三者で信頼できる人を指定しておくとよいでしょう。
自分の亡き後に不安を感じている方は、ご自身が元気なうちに公正証書遺言を作成して、万一の場合に備えておくことをおすすめします。